更新日: 2023年11月30日

医療安全管理室

医療安全管理指針

1.医療安全に関する基本的な考え方

医療技術がますます高度化、専門化、複雑化する一方、医療の質と安全性へのニーズが急速に高まっている。当院は紀南地方における地域医療支援病院、臨床研修指定病院、がん診療連携推進病院であると同時に、この地域の基幹病院として急性期医療、救急医療を充実させる責務を担っており、医療の質の向上と安全性をより高めていくためには、組織全体で取り組んでいくことが重要である。

医療の現場では医療従事者の不注意が、単独であるいは積み重なることによって、医療上望ましくない事態を引き起こし、患者の安全を損なう結果を招きかねない。患者の安全を確保するためには、まず我々医療従事者の不断の努力が求められる。さらに、日常現場の過程に幾つかのチェックポイントを設けるなど、単独でのミスがすぐに医療事故という形で患者に実害を及ぼすことのないような仕組みを構築することが重要である。

本指針はこの様な考え方のもとに、職員個人レベルでの事故防止への取り組みと、病院全体での組織的な事故防止対策の二つの対策を推進することによって、医療事故の発生を未然に防ぎ、患者が安心して医療を受けられる環境づくりを目指すものである。

1)用語の定義

本指針で使用する主な用語の定義は、以下のとおりとする。

  • 医療事故(アクシデント):医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故を指し、医療過誤の場合を含む。なお、医療従事者の過誤、過失の有無は問わない。
  • 医療過誤:医療事故の一類型であって、医療従事者が、医療の遂行において、基本的施行方法・注意事項に違反して、患者に被害を発生させた行為を指す。
  • インシデント(ヒヤリ・ハット):医療現場において、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見できた事例、又は誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に明らかな影響を及ぼさずに済んだ事例を指す。
  • クレーム:患者及び家族からの診療上の訴えを指す。
  • 職員:本院に勤務する医師、看護師、助産師、薬剤師、検査技師、管理栄養士、放射線技師、臨床工学技士、セラピスト、事務職員など、あらゆる職種を指す。
  • 医療安全管理委員(リスクマネージャー):医療安全の確保と医療安全対策を各医療現場に浸透、推進させる担当者として、各医療現場で発生した医療事故およびインシデント報告、医療事故防止に関する問題点等の提起および解決などを担当する。
  • 医療安全管理者:院内における医療の質と安全確保のために必要な権限の移譲と、人材、予算及びインフラなど必要な資源を付与されて、院長の指示に基づいて、その業務を行う者を指す。

2.医療に係る安全管理の組織体制

当院では医療事故を防止し、医療安全管理を推進するために、次のような組織体制を整備する。

1)医療安全管理委員会
  • 医療安全管理委員会の設置

    本院内における医療安全管理対策を総合的に企画・実施するために、「医療安全管理委員会規程(資料1)」に基づき医療安全管理委員会を設置する。

  • 医療安全管理委員(リスクマネージャー)の構成
    • 医療安全管理委員会のメンバーは、以下のとおりとする。

      副院長(医療安全管理室室長)
      診療部長(1名)
      医局長
      医療安全管理者(専従)
      医薬品安全管理責任者(薬剤部科長)
      医療機器安全管理責任者(臨床工学部技師長)
      看護副部長(1名)
      各部署の看護師長
      中央検査部技師長
      放射線科技師長
      リハビリテーション科技師長
      庶務課長
      医療業務課長
      保安渉外管理責任者

    • 委員会の会議には、必要に応じて委員以外の出席を認める。
    • 委員長が不在の場合は、診療部長がその職務を代行する。
  • 任務

    医療安全管理室は、主として以下の任務を行う。

    • 医療事故の原因分析並びに再発予防策の検討および提言に関すること
    • インシデント事例の原因分析並びに再発予防策の検討および提言に関すること
    • 医療事故防止のために行う職員に対する指示に関すること
    • 医療事故防止のために行う院長等に対する提言に関すること
    • 医療事故防止のための啓発、教育、広報等に関すること
    • その他医療事故の防止に関すること
  • 医療安全管理委員会の開催および活動の記録
    • 医療安全管理委員会は、原則として、月1回定例会を開催するほか、必要に応じて委員長が招集する。
    • 委員会を開催したときは、速やかに検討内容をまとめた議事の概要を作成し、3年間これを保管する。
    • 各部門における医療安全対策の実施状況の評価に基づき、医療安全確保のための業務改善計画書を作成し、その実施状況及び評価結果を記録する。
    • 委員会における議事の内容および活動の状況について、必要に応じ院長に報告する。
2)医療安全管理室
  • 医療安全管理室の設置

    本院内における医療安全に係る事項を総合的に管理する部門として、医療安全管理室を設置する。

  • 職員の構成

    医療安全管理室のメンバーは、以下のとおりとする。

    副院長(室長)
    医療安全管理者(専従)
    医薬品安全管理責任者(薬剤部科長)
    医療機器安全管理責任者(臨床工学部技師長)
    医療業務課長
    保安渉外管理責任者

  • 任務

    医療安全管理室は、主として以下の任務を行う。

    • 医療安全管理室の業務に関する企画・立案および評価を行う。
    • 定期的に管理室メンバー、または感染管理者と共に院内を巡回し、各部門における医療安全対策の実施状況を把握・分析し、医療安全確保のために必要な業務改善等の具体的な対策を推進する。
    • 各部門における医療安全管理委員の支援を行う。
    • 医療安全対策の体制確保のため、必要に応じて感染管理者や各部門の責任者と調整を行う。
    • 医療安全対策に係る体制を維持するため、感染管理者等と協同して職員研修を企画・実施する。
    • 相談窓口等の担当者と連携を図り、医療安全対策に係る患者・家族の相談に適切に応じる体制を支援する。
  • 医療安全管理室会議の開催および活動の記録
    • 医療安全管理室会議は、月1回定例会を開催するほか、必要に応じて室長が招集す る。
    • 会議を開催したときは、速やかに検討内容をまとめた議事の概要を作成し、3年間こ れを保存する。
    • 院内を巡回し、各部門における医療安全対策の実施状況および評価結果を記録する。
    • 医療安全管理委員会との連携状況、院内研修実績、患者等の相談件数および相談内容、相談後の取扱い、その他の医療安全管理者の活動実績を記録する。
    • 医療安全管理室会議における議事の内容および活動状況について、必要に応じ院長に報告する。
3)医療安全管理者

医療安全管理室の業務に関する企画立案及び評価と共に医療安全に関する職員の意識の向上や指導などの業務を行う。
医療安全管理者の業務指針は「医療安全管理者の業務指針(資料2)」に定める。

4)医薬品安全管理責任者

医薬品に関わる安全管理のための体制の確保と、医薬品の安全使用等の業務を担当するため、薬剤部に医薬品安全管理責任者を置く。

5)医療機器安全管理責任者

医療機器に関わる安全管理のための体制の確保と、医療機器の安全使用等の業務を担当するため、臨床工学部に医療機器安全管理責任者を置く。

3.医療安全確保を目的とした改善方策に関する基本方針

1)報告と目的

ここでいう報告とは、医療安全を確保するためのシステムの改善や教育・研修の資料とすることのみを目的としており、報告者はその報告によって何ら不利益を受けないことを確認する。具体的には、「院内における医療事故や、危うく事故になりかけた事例などを検討し、医療の改善に資する事故予防対策、再発防止策を策定すること」、「これらの対策の実施状況や効果の評価・点検などに活用しうる情報を院内全体から収集すること」を目的とする。これらの目的を達成するため、すべての職員は次項以下に定める要領に従い、医療事故などの報告を行うものとする。

2)報告に基づく情報収集
  • 報告すべき事項

    すべての職員は、院内で次のいずれかに該当する状況に遭遇した場合には、それぞれに示す期間を越えない範囲で、速やかに報告するものとする。

    • 医療事故(アクシデント):医療側の過失の有無に拘わらず、患者に望ましくない事象が生じた場合は、発生後直ちに所属長・医療安全管理者に連絡し、院長に報告する。
    • インシデント:速やかに所属長・医療安全管理者に報告する。
    • その他、危険と思われる状況:所属長または医療安全管理者に報告する。
  • 報告の方法
    • 上記の報告は、原則として別に報告書式として定める書面(電子入力)をもって行う。ただし、緊急を要する場合には、まずは口頭で報告し、患者の救命措置などに支障が及ばない範囲で、遅滞なく書面(電子入力)による報告を行う。 報告書は、診療録・看護記録などの事実に基づき作成する。
    • 自発的報告がなされるよう、報告者名を省略して報告する。
3)報告内容の検討等
  • 改善策の策定

    医療安全管理委員会は、上記の定めに基づいて報告された事例を検討し、再発防止の観点から本院の組織として改善に必要な防止対策を策定するものとする。

  • 改善策の実施状況の評価

    医療安全管理委員会は、既に策定した改善策が、各部門において確実に実施され、かつ安全対策として有効に機能しているかを常に点検・評価し、必要に応じて見直しを図るものとする。

4)その他
  • 医療安全管理委員会の委員は、報告された事例について職務上知り得た内容を正当な事由なく、第三者に告げてはならない。
  • 本項の定めに従って、報告を行った職員に対しては、これを事由として不利益な取り扱いを行ってはならない。

     

4.医療安全管理のための職員研修に関する基本方針

1)医療安全管理のための研修の実施
  • 医療安全管理者は、予め作成した研修計画に従い、年2回以上、全職員を対象とした医療安全管理のための研修を定期的に実施する。
  • 研修は、医療安全管理の基本的な考え方、事故防止の具体的な手法などを全職員に周知・徹底することを通じて、職員個々の安全意識の向上を図るとともに、本院全体の医療安全を向上させることを目的とする。
  • 職員は研修が実施される際には、可能な限り受講するよう努めなくてはならない。
  • 院長は、本指針の定めに拘わらず、院内で重大事故が発生した後など、必要があると認めるときは、臨時に研修を行うものとする。
  • 医療安全管理者は、研修を実施したときは、その概要を記録し、3年間保管する。
2)医療安全管理のための研修の実施方法

医療安全管理のための研修は、院内での報告会、事例分析、外部講師を迎えての講習、外部の講習会・研修会の伝達報告会、Web研修、または有益な文献の抄読などの方法によって行う。

5.事故発生時の対応に関する基本方針

1)救命措置の最優先

医療者側の過誤・過失によるか否かを問わず、患者に望ましくない事象が生じた場合には、可能な限り、まず院内の総力を結集して、患者の救命と被害の拡大防止に全力を尽くす。

2)病院長への報告等
  • 上記の目的を達成するため、事故の状況、患者の現在の状態などを、所属長を通じて、あるいは直接院長などへ迅速かつ正確に報告する。
  • 院長は、必要に応じて委員長に医療安全管理委員会を緊急招集・開催させ、対応を検討させることができる。
  • 報告を行った職員は、その事実及び報告の内容を、診療録、看護記録などに記録する。
3)患者・家族・遺族への説明
  • 事故発生後、救命措置の遂行に支障を来さない限り可及的速やかに、事故の状況、現在実施している回復措置、その見通しなどについて、患者本人、家族等に誠意をもって説明するものとする。
  • 説明を行った職員は、その事実及び説明の内容を、診療録、看護記録などに記録する。

6.患者および家族からの相談およびクレームへの対応に関する基本方針

患者および家族等からの相談に迅速に対応し、医療の安全と信頼を確保するために、地域医療連携室に相談窓口を設置する。医療事故および医療に関するクレームには、医療安全管理室が対応する。

また、医療安全上の報告制度に基づき、必要な事例に対しては医療安全管理室が積極的に早期介入する。

7.医療安全管理指針および医療安全対策マニュアルの改廃

医療安全管理室は、必要に応じて随時、本指針をはじめ医療安全対策マニュアルの見直しを医療安全管理委員会に諮るものとする。

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